Dental DX / AI

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DXの進め方

DXには三つの段階があります。歯科は、まだ一段目です。

DXという言葉は広く使われすぎて、意味が曖昧になりました。もともとは三段階に整理されたものです。自院がどこにいるかが分かると、次に何をすべきかも決まります。

三つの段階

DXという言葉は、いまや何にでも使われます。ただ、経済産業省がDXレポートで示した整理では、三つの段階に分けられています。

一段目、デジタイゼーション。アナログをデータに置き換える段階です。紙のカルテを電子にする。手書きの記録を入力する。フィルムをデジタル画像にする。やっていること自体は、それまでと変わりません。

二段目、デジタライゼーション。データになったことを利用して、業務のやり方そのものを変える段階です。どこからでも同じ情報を見られるので、前日の準備作業がいらなくなる。集計が自動になったので、毎月の作業がなくなる。ここで初めて、仕事の形が変わります。

三段目、デジタルトランスフォーメーション。事業のあり方そのものを組み替える段階です。得られたデータをもとに提供するものを変える、新しい価値を生む、といった話になります。

歯科は、一段目すら道半ばです

この整理に照らすと、歯科業界の現在地ははっきりしています。

紙とファクシミリが現役です。手順は口頭で伝えられています。ルールは分厚い冊子の中にあって、誰も読んでいません。一段目の、そのまた途中です。

これは業界全体の構造の問題であって、院長先生一人の責任ではありません。診療報酬の制度上、投資の回収が読みにくい。目の前に患者様がいるので、事務作業は診療後に回る。少人数で、専任の担当者を置けない。どれも個々の医院ではどうにもならない事情です。

遅れているということは、伸びしろが大きいということでもあります。

他業種がすでに通った道なので、失敗例も成功例も出揃っています。先行者利益を狙う必要がなく、うまくいったやり方だけを持ってくればいい。この点では、むしろ有利です。

アナログレントゲンは、もうありません

「デジタル」「DX」と聞くだけで身構える方もいらっしゃいます。ただ、少し考えてみてください。

アナログのレントゲンは、いまほとんど見かけません。フィルムのカメラも、口腔内写真の撮影ではまず使いません。これらは立派なデジタイゼーションです。そして、皆さんはすでに受け入れています。

つまり、抵抗があるのは変化そのものではなく、変化の途中にある不確実さのほうです。移行が終わってしまえば、誰も元に戻りたいとは言いません。

一段目を、飛ばさない

ここが実務上いちばん大事なところです。

一段目を飛ばして三段目に行くことはできません。紙のままのデータは、分析もできませんし、AIから見ることもできません。「データを活用して経営判断を」という話は、データが存在して初めて成立します。

ですので、順番に進めることをお勧めしています。まず、記録が残る形にする。次に、その記録を使って作業を減らす。そこまで来てから、活用の話をする。

逆に、一段目さえ終わっていれば、二段目から先は思ったより速く進みます。私の経験では、詰まるのはたいてい一段目です。

二段目に入ると、何が変わるか

言葉の整理だけでは実感が湧かないので、二段目に入ったときに何が起きるかを書いておきます。

紙のサブカルテを電子にする。これは一段目です。作業自体は変わっていません。

ところが、電子になったことで、前日に翌日分を準備して並べておく必要がなくなります。医院の規模によっては、この作業に毎日1時間から2時間かかっています。人件費だけで見ても、導入する価値があります。

同じことが、集計にも起きます。数字が手入力の紙にある状態では、月末に集計作業が発生します。データとして残っていれば、集計は自動になり、しかも毎日見られるようになります。「月末にならないと分からない」が「いつでも分かる」に変わる。これが二段目です。

ここまで来ると、経営の判断の仕方が変わります。感覚で決めていたところに、根拠が置けるようになるからです。

三段目は、歯科では何になるか

三段目、つまり事業のあり方が変わる段階は、歯科ではまだ事例が少ない領域です。

ただ、兆しはあります。院内で使っていた仕組みが、他院にも提供できる水準に育つ、というケースが実際に出てきています。自院の課題を解決するために作ったものが、同じ課題を持つ医院の役に立つ。これは、診療以外の収益源が生まれるということです。

あるいは、蓄積した記録が、教育や採用の資産そのものになる。手順書と指導記録が揃っている医院は、新人の立ち上がりが速く、それが採用力に直結します。

いずれにせよ、一段目と二段目が終わっていないと、この話は始まりません。

「2025年の崖」が示していたこと

経済産業省がDXレポートで警告した「2025年の崖」は、古いシステムを刷新できないまま放置すると、経済全体で大きな損失が生じる、という趣旨のものでした。

指摘の中身は、規模を落とせば歯科医院にもそのまま当てはまります。部門ごと、担当者ごとに仕組みがばらばらに作られている。過剰に個別最適化されていて、誰も全体を把握していない。結果として、データが横断して使えない。

大企業では「システムが複雑化・ブラックボックス化している」と表現されます。医院では「あの人しか分からない」と表現されます。言葉が違うだけで、同じことが起きています。

いまの自院は、どこにいるか

最後に、簡単な確認の仕方を書いておきます。

院内のルールを知りたいとき、人に訊かずに調べられますか。手順書は、探せば見つかりますか。先月の数字を、いま見られますか。スタッフが自宅から、必要な情報にアクセスできますか。

すべて「はい」であれば、一段目は終わっています。どれか一つでも「いいえ」があれば、そこが次に手をつける場所です。難しい診断は要りません。

どこから手をつけるか

三段階のどこにいるかが分かったら、次はどこから触るかです。判断の材料は三つで足ります。

その作業は、毎日または毎月、繰り返し発生しているか。繰り返さない作業を効率化しても、効果は一度きりです。

いま、誰かの時間を明確に奪っているか。誰も困っていない作業を改善しても、感謝されません。

失敗したときに、元に戻せるか。戻せないものから始めると、判断が重くなって進みません。

この三つに当てはまるものから順に触っていくと、たいてい大きく外しません。

株式会社デンタル・デジタル・ウェルビーイング
代表取締役 高野 祐(歯科医師)

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