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人と組織

有効求人倍率が20倍を超えるということ。

採用が難しいのは、努力が足りないからではありません。構造がそうなっています。ただ、構造を正しく理解すると、打つ手のほうも変わってきます。

まず、数字を確認します

歯科衛生士の有効求人倍率は、集計によって幅がありますが、20倍を大きく超える水準が続いています。一人の求職者を、20を超える医院が取り合っている計算になります。

免許を持っている方の総数は、決して少なくありません。問題は、そのうち実際に働いている方の割合です。結婚や出産で一度離れ、そのまま戻らない。この構造が長く続いてきました。

勤務実態の調査では、歯科衛生士の7割以上が転職を経験しており、そのうち半数以上は複数回にわたっているという結果も報告されています。定着しにくい職種である、ということが数字にも出ています。

競争相手は、近所の歯科医院ではありません

ここが、以前と大きく変わった点です。

助手や受付の採用について言えば、競争相手はもはや同業ではありません。一般企業の労働条件が上がったことで、他業種との人材の奪い合いになっています。

週休二日、残業なし、有給が取れる、産休育休の実績がある。これらは以前なら差別化要因でしたが、いまは応募の前提条件に近づいています。ここで劣後していると、そもそも比較の土俵に乗りません。

条件で勝てないなら、条件を作り出すしかありません。

だから、時間を作る話になります

ここが、DXの話と接続する部分です。

残業が常態化している医院と、していない医院。どちらに応募が集まるかは明らかです。そして残業の多くは、診療そのものではなく、診療後に回された事務作業から生まれています。

患者様が帰られてから、集計をする。翌日の準備をする。書類を作る。この時間を減らせれば、労働条件が実際に変わります。求人票の文言ではなく、実態のほうが変わります。

採用にかける費用を増やすより、この方向のほうが確実だと考えています。人材紹介に頼る比率が上がると、採用単価は上がり続けます。一方、業務時間の削減は一度作れば毎年効きます。

求人票は、実態が変わってから書き直す

採用で最初にやりたくなるのは、求人票の書き直しです。順番としては逆をお勧めしています。

働きやすさを謳って採用し、入ってみたら違った、という経験は、応募者側にかなり蓄積されています。転職を繰り返している方ほど、書かれていることを額面通りには受け取りません。

ですので、まず実態のほうを変える。残業が減った、手順が整理された、訊きたいことがすぐ分かる。その状態を作ってから、事実として書く。そのほうが結果的に強い求人票になりますし、入職後の齟齬も減ります。

調べる作業は、任せられます

とはいえ、求人を出す作業そのものが重いのも事実です。

地域の賃金相場を調べる。近隣がどういう条件を出しているかを見る。自院の条件と比べて、どこが強くてどこが弱いかを整理する。そのうえで、媒体ごとに書き分ける。真面目にやると数日かかります。

この調査と下書きの部分は、いまはかなり任せられます。地域を指定して相場を調べさせ、自院の条件を渡して比較させ、媒体に合わせた原稿の叩き台を作らせる。数時間の作業が、数十分になります。

院内に貼る掲示物も同じです。外注すると期間も費用もかかるものが、その場で叩き台まで出てきます。もちろん最後は手を入れますが、ゼロから始めるのとは負担がまったく違います。

採ることより、辞めないこと

ここからが本題です。採用が難しい時代に、いちばん費用対効果が高いのは、いま在籍している方が辞めない状態を作ることです。

一人辞めると、採用費用と、教育のやり直しと、その間の残りの方の負担が、まとめて発生します。紹介会社を使えば、一人あたりの費用はさらに上がります。この循環に入ると、採用費用が構造的に増え続けます。

辞める理由は待遇だけではありません。何をすれば評価されるのか分からない。誰に訊けばいいのか分からない。同じことを何度も訊いて申し訳ない。この種の小さな摩擦の積み重ねが効いています。

仕組みは、働きやすさの一部です

手順が見える場所にあり、ルールが検索でき、評価の基準が明示されている。これらは福利厚生ではありませんが、働きやすさに直結します。

特に効くのが、評価の基準です。何ができれば次の段階に上がれるのかを、本人がいつでも確認できる状態。これがある医院は、まだ多くありません。多くの場合、面談の直前になって慌てて振り返ることになります。

自分がどこにいて、次に何をすればいいのかが分かる。この一点だけでも、定着にはかなり効きます。

採用は、経営者だけの仕事ではありません

最後に一つ。人が採れない、辞めてしまうという話は、どうしても院長先生一人が抱え込みがちです。

ただ、新人の方がいちばん頼りにするのは、直接教えてくれる先輩です。その先輩が、教える余裕を持てているかどうか。ここが定着を左右します。

教える側の負担を軽くすることは、採用施策でもあります。順番として、ここは意外に見落とされます。

株式会社デンタル・デジタル・ウェルビーイング
代表取締役 高野 祐(歯科医師)

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