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人と組織

デジタルは、開業前がいちばん安く済みます。

後から変えるのが大変なのは、システムではなく人の習慣のほうです。何もない状態から始められるのは、開業のときだけです。

大変なのは、システムではありません

紙をデータに移すとき、いちばん時間がかかるのはデータの移行ではありません。人の習慣です。

いままでのやり方で回っていたものを変えるとき、抵抗が出るのは自然なことです。誰にでもあります。特に、そのやり方で長くうまくやってきた方ほど、変える理由が見えません。

そして、移行の期間は必ず一時的に負担が増えます。新旧が並走し、両方を触らなければならない時期がある。ここで「やっぱり前のほうが良かった」という声が出ます。押し切って進める意思が、上に立つ人には必要になります。

開業のときは、その抵抗がありません

私の医院は、開院の日から紙のサブカルテを持ちませんでした。所属する法人の中でも、それをやったのは私の医院が最初です。

難しくはありませんでした。新しく入ったスタッフにとっては、それが最初から当たり前だったからです。比べる対象がないので、抵抗のしようがない。

後から変えるより、最初からそうしておくほうが、はるかに安く済みます。

その後に入ってきた方も同じです。「うちはこうです」で終わります。説得も、移行期間も、並走もありません。

私の場合は、選択肢がありませんでした

正直に書くと、志が高かったわけではありません。

開院時、スタッフは全員が新規採用でした。助手と受付は、全員が未経験。私自身にマネジメントの経験は一切ありませんでした。

その状態で初日から組織を回すとなったとき、普通のやり方では無理だと感じました。徹底的な効率化しか道がない。だから最初から手をつけた、というのが実際のところです。

道具より先に、文化を決めておく

開業前のご相談で、どのシステムを入れるべきかを訊かれることがあります。もちろん大事なのですが、その前に決めておいたほうがいいことがあります。

この医院は、情報をどこに集めるのか。何を記録として残すのか。誰が見られる状態にしておくのか。紙を使うのはどういう場面に限るのか。

ここが決まっていれば、道具は後から差し替えられます。逆に、ここが決まっていないと、どの道具を入れても同じところで詰まります。

開業前に決めておくこと

具体的に何を決めておけばいいのか、順番に書いておきます。

紙を使う場面を、先に限定する。すべてを無くす必要はありません。ただ、「ここは紙」と決めた場所以外は紙を作らない、と最初に宣言しておく。後から線を引き直すほうが、ずっと大変です。

情報を集める場所を、一つ決める。連絡はここ、手順書はここ、と場所ごとに分けると、探す先が増えます。入口は一つにしておく。

誰が何を見られるかを決める。権限の設計です。後から整理するのは面倒なので、最初に決めておくと楽です。特に、退職された方のアクセスをどう止めるかは、開業時に考えておくべきことの一つです。

何を記録として残すかを決める。会議、指導、手技。残すと決めておかないと、日常が始まった瞬間に流れていきます。

採用のときに、伝えておく

これは意外に効きます。面接の段階で、「うちはこういうやり方です」と伝えておくことです。

紙をほとんど使わないこと。連絡はここを見ること。手順書は動画であること。スマートフォンを業務で使うこと。

合わない方は、この時点で辞退されます。それでいいのです。入職後に「思っていたのと違う」となるより、はるかに損失が小さい。そして残った方は、最初からそれを前提に入ってきます。

選ぶときの基準

そのうえで、システムを選ぶときに私が見ているのは三つです。

何のために入れるのか。ここが曖昧なまま「良さそうだから」で入れたものは、まず使われません。解決したい具体的な困りごとを、先に一つ決めてください。

いちばん使う人にとって使いやすいか。多機能なほど良いわけではありません。院内でいちばん触るのは、多くの場合は受付や助手の方です。その方が迷わないことのほうが、機能の数より効きます。

後から抜けられるか。ここは特に重要です。データを取り出せない形で囲い込まれると、次に良いものが出てきても動けなくなります。この分野は数年で状況が変わるので、乗り換えられる余地を残しておくべきです。

加えて、将来的に分院を考えておられるなら、複数拠点で同じものが使えるかも見ておいてください。拠点ごとに違う仕組みになると、後から統一するのは相当な労力になります。

すでに開業されている場合

もちろん、後からでも変えられます。私自身、他院様のご支援ではその作業を一緒にやっています。

ただ、順番は同じです。全部を一度に変えようとせず、効くところから、一つずつ。試験的に始めて、駄目なら戻せる形にしておく。

そして最初に手をつけるのは、やはり情報共有と教育です。ここが動き出すと、あとは現場のほうから「これも何とかならないか」と出てくるようになります。そうなれば、もう軌道に乗っています。

移行に必要な期間は、規模にもよりますが、数ヶ月というのが実感です。長いように思えますが、開業してから10年、20年と続けることを考えれば、十分に回収できる投資だと思っています。

株式会社デンタル・デジタル・ウェルビーイング
代表取締役 高野 祐(歯科医師)

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